無革新 「山名祐豊 プレイリポート」(完結編)




     最後の一戦(〜プレイ終了)


 「……この一戦で全てが決まる。か、」

軍馬に跨り眼下に広がる山名軍旗を見て信玄はそれを肌で感じていた。
ビンビン伝わってくる闘気はこれまでの戦いの比ではない、
何千、何万、何十万という兵の気が深志城を中心に渦巻いているのである。
ともに戦ってきた信頼する部下達の多くは既に敵に捕えられ首を刎ねられたという。
数年前まで世に恐れられ戦国最強と謳われて来た武田騎馬隊は、
いつしか幕府そして武士の棟梁である将軍に刃向かう逆賊の軍となっていた。

 「信玄殿、如何された?」

白い法衣を身にまとった将が信玄と馬を揃える。
最大のライバルにして今は最高の家臣であり友人でもある謙信だった。

 「わしも、うぬも歳を取りすぎたのう。」

いつもは鋭い目付きも穏やかに信玄は笑って答えた。
信玄も謙信も寿命延長の家宝を持っていた。
いつまでも戦えるのは、その家宝のお陰なのだろう。
そろそろ病気の一つや二つ、掛かってもらわなければコッチが困る。

 「まさか、我らがここまで追い込まれる世がくるとは、
  ……こればっかりは長生きしてみないとわからないもんじゃ。」

信玄はそういうと、いつもの鋭い眼光を取り戻していた。
隣の謙信も黙って頷く、山名軍が深志城に迫るある日の出来事でした。
さて、その頃の岡崎城天守。

 「げほっ、げほっ、うーん、冬の寒さが身にしみるプー。」

将軍祐豊は岡崎にあって留守番をしていました。
駿府城から躑躅ヶ崎館を攻略した山名幕府軍は進路を深志城へと向けました。
深志城は武田軍の本拠地であり関東、中部、北陸への中継地点として多くの兵が駐屯。
幕府軍としても深志城を背負って東進は出来ません。
稲葉山、岡崎、躑躅ヶ崎館と三方向から攻撃が可能となった今こそ、

 「深志城を攻めるべきなのです。」

いつもは冷静な今孔明こと半兵衛が力説していたのを思い出す祐豊。
時折、咳き込む仕草が気になっていた祐豊は、ようやく気がつきました。
……彼には残された時間が少ないのだろう。と、

 「あー、誰ぞおらぬか? 返事するプー。げほっ、げほっ。」
 「上様、また山をご覧になっていたのですか?」

小姓がそっとやってくると、
祐豊は躑躅ヶ崎館へ使いを出すように命じました。

 「当家に唯一の寿命延長の家宝だプー。半兵衛にやるプー。」

その使者に託された家宝は半兵衛に残された命を引き伸ばすモノ。
焦っていては老獪な指揮をする信玄には勝てないと考えたのか、
それともただの気まぐれか?

 「げほっ、げほっ、うわー、なんか血が出てきた。……見なかった事にするプー。」

おぃ、ちょっとまて、祐豊の寿命もそろそろか?
ちゃんと病院行け、薬飲め、城入って寝ろ!

 「わかってるプー。五月蝿いプー。」

その夜、祐豊は甥の豊国を呼び出したと言う……。
こうして一時代を築いた男達がこの世を去ろうとしているこの頃、
深志城では激しい戦いが繰り広げられていました。

旧大友家が開発していた大筒が火を噴き深志城へと砲弾を吐き出し続け、
織田信長お得意の鉄砲戦法【釣瓶撃】を、
島津家久お得意の鉄砲戦法【捨て奸】を、
そして鈴木重秀お得意の鉄砲戦法【組撃ち】という風に、
勇将、名将たちの固有戦法発表会場に早変わり!
上杉謙信も負けじと騎馬戦法【車懸り】で応戦し、
一発決まれば五千、一万当たり前で兵士が消えていきます。

特に今回の謙信は、まさに軍神のようで、
対する部隊を次から次へと壊滅に追い込むのです。
柴田勝家、本願寺顕如、浅井長政、吉川元春、島津義弘など、
官位と家宝のドーピングで統率100を超える武将も数秒で吹き飛ぶ恐ろしさ。
彼らは部隊が壊滅すれば自軍の城へと戻り、再び兵士を率いて攻め上る、
問題は彼らに付き従う知謀の士や、戦法三連鎖の為に無理矢理入れられた微妙な副将が、
ガシガシ敵に捕まっちゃうというコト、下手スりゃ討死だもんな。

武田信玄が、上杉謙信らが戦場で暴れ周り、
徳川家康が、真田昌幸が、本多正信らがコチラの計略系戦法を次々と看破する。
あれ? おかしいぞ、いままで戦ってきた武田軍より、かなり強い。
そりゃ南部家が滅びて後顧の憂い無しと、全力で戦っているのは確かですが、
それにしても強すぎる。

長宗我部元親、陶晴賢、高橋紹運、下間頼廉、島津家久、明智光秀、蒲生氏郷、
足利義昭、藤堂高虎、宇喜多直家、鍋島直茂、南光坊天海、小早川隆景、
これでもか、これでもかと、秀でた武将達をどんどん投入していっても、
奴らは全然退いてくれない、むしろ押されてる?
この兵力で? この武将のラインナップで? なんで? どうして?

そうか! いままで武田軍は広い領地に大量の兵士を持っていた。
2箇所、3箇所同時の戦闘は当たり前、だから敵将はバランスよく散らばっていたんだ。
それが今はどうだ? 少ない領地で集中した武将運用。
つまり、最初、我ら山名家が武田軍に奇跡的勝利をしたのは、
コチラの武将が揃っていて、武田の武将が散らばっていたからなんだ!

いつもは武田軍の頭の悪い部隊に対して【混乱】や【威圧】を掛けて主導権を握る、
しかし、武田軍の武将が集結しているこの戦いだと、敵各部隊に智将が配置されている。
簡単には計略系戦法が効かない。

こういう状態なのでお互いの計略系戦法は潰し合いになって効果はそんなに出ないんだ。
と、なると、騎馬系技術が最大まで上がっている武田軍の方が断然有利、
【闘志】がどんどん貯まって行く上に、騎馬系戦法を連発しコチラは大ダメージ。
コチラの知力系武将が捕えられていくと……これ、かなりマズイ状態だよな。
もちろん、部隊が壊滅する前に撤退を心掛けているが、
信玄、謙信クラスが騎馬系戦法を三連鎖させると一万なんてあっという間に消える。
こればかりは防ぎようが無いんだよ。

幾多の命を失いつつ、いつもなら前進をしているハズ、いまは後退。
前線で戦う部隊が壊滅し、後方で大筒を撃っている部隊にまで敵の攻撃が及ぶ。
どうしよう? 全軍撤退? それとも、もっと兵力を投入する?
ここで判断を誤れば、ここまでの苦労が水の泡に帰す可能性が高い、
なんつったって、謙信隊一部隊で、一体何部隊が壊滅しているか解からない状態なんだ。

 「どうする? どうする? どうする?」

山名軍全体が浮き足立っているような気がする。
それもそうだ、だって、プレイヤーであるわたしが完全に焦っているんだもんな。
まず、落ち着いて……落ち着いて……いま貯まっている闘志を有効に使おう、
もしかしたら【混乱】とかが決まるかもしれない。
いや、ここは【鼓舞】をして自軍の【闘志】の上昇率を上げよう。
そしたら我慢だ。ずぅっと我慢。一部隊壊滅しても我慢。二部隊壊滅しても我慢。

こちらの智将達の【闘志】が貯まってきた。
敵、謙信隊の【闘志】バーの色は青く光っている、
いつ戦法を打ってくるか、かなり危険な状況だ。

   ……も、もう我慢できない。

竹中半兵衛隊、上杉謙信隊に【混乱】を掛ける!
……き、きまった。全軍、反撃に移れ!
鉄砲隊は優先的に騎馬隊に攻撃、敵部隊を城の中へ押し込めて騎馬戦法を封じる。
それでも武田軍は周囲の拠点から次々と後詰部隊が集まってくる。
コッチも苦しいが、きっと武田軍だって苦しいハズ、後詰部隊に騎馬はほとんど無い、
武田軍と言えども騎馬以外なら、それほど恐れるコトはない!
幕府軍は後方の拠点から運べる物資は全て運び、投入できる戦力は全て投入した。

   この一戦で、全ては決するっ!!

黒田官兵衛の【火牛計】が決まると同時に流れは幕府軍に傾いた。
深志城の外にいる後詰部隊は大きくダメージを受け城内にも入れない。
人海戦術で大量に戦力を投入した幕府軍は後詰部隊を次々と駆逐していき、
深志城は丸裸、九州から運び入れた大筒が火を噴き、
難攻不落と思われた城は呆気なく炎上していく、
信玄、謙信といった主だった武将達は上手い具合に落ち延びていったが、
この戦いで完全に決着がついたと言えよう。

武田総兵力は僅か二十万、対する幕府軍は二百二十万。
軍馬の大半を失った武田軍は、足軽と弓兵がメインとなり、
その勢いは大幅に減退した。

内政技術、築城技術にも優れる武田軍はそれでも各拠点が頑強に抵抗したものの、
もはや、流れを返る程の大きな抵抗は出来ず、
徐々にではあるが北へ、北へと退いて行かざるを得なかった。

将軍山名祐豊は深志城の一戦が終ると、
ほぼ同時に病を発し床に伏せ、その後、間も無く亡くなった。
後をついだ甥の二代将軍山名豊国は優れた家臣団の強力な支援を受け、
北方へと逃れた武田軍を追討、こうして1583年、天下はひとつに統べられたのである。
後に、戦国日本へと渡ってきた宣教師達はジパングの王「祐豊」の言葉を
このように書き残している。

  道具は人の暮らしを便利にするが、使い方を誤れば破壊を生み出す。
  この戦乱の世にあって道具は破壊を生み出す為だけに使われてきた。
  いや、我らが生を受けるその遥か昔から、
  この腰にある刀も槍も人が人を倒すために使われてきた。
  もし、刀も槍もなければ戦は起こらなかったに違いない。
  それならば、少しくらい不便でも平和な世の中が良いプー。

プー?
え? なに? 伝記にもプー?
色々と納得行かない部分も多々ありますが、
これで技術については革新を全くしない、
(南蛮人から貰った技術は仕方ないとして……。)
無革新リプレイは終了です。

読んでくださった皆様、予想外に天下統一しましたがどうでしょうか?
わたしにとっても予想外です。まず毛利あたりに勝てないと考えていましたから、
だけど意外と技術なしでも行けるってコトがわかりました。貴重な経験でしたよ。ホント、
でも、絶対オススメしません。時間掛かりすぎですから……。
それに今回は「運」も大いに影響しました。

まず、いつも泣かされる天災がほとんど無かったという事。
兵糧確保に大きく影響しますからね。
今回は(ある意味)兵糧攻めも行ったので重要な要素です。

次に、上杉ではなく、武田が巨大化したという事。
上杉家固有技術【軍神】は闘志上昇+30%の技術なんです。
同じく騎馬技術【旗指物】も闘志上昇+30%ということで、
凄まじい勢いで闘志が上昇していっちゃうんですよ。
武田家固有技術【風林火山】は敵の動揺率がUPするという事で、
これはコレで嫌なんですけど、騎馬系戦法さえ喰らわなければ大丈夫なので、
【軍神】に比べれば「まだ」というか「よっぽど」マシだと思うのです。

更に、本願寺家と鈴木家が武田家に潰されなかった事。
これは大きいです。意外と両家が頑張ってくれたお陰で
良将を武田に吸収されずに済み、
さらに序盤から中盤に掛けては防波堤の役目も果たしてくれました。

最後に、予想以上に計略系戦法がビシバシ決まったという事。
リプレイ収録の為のプレイはセーブ&ロードは最小限に抑えています。
(その方が面白い状況が出来るからね。)
その為、ホントに一進一退の攻防が続くんですよ。
だけど、ある瞬間にビシっと【混乱】あたりが決まると、
そこから雪崩式に相手が崩れていきます。
この最初の【混乱】がどのタイミングで決まるか、運ですよ。運。
敵も味方も智将を多く擁していますから予想つきません。

セーブ&ロードを繰り返して【混乱】が掛からない場合は、
違う部隊に【混乱】を掛けてみる、といった工夫をすれば、
もうちょっと楽に遊べるかもしれませんね。

また、天下統一(武田家に降伏勧告する寸前)のスクリーンショットは撮っておきました。
と、言っても諸般の事情の為、現在のところ当サイトでは、
基本的にゲーム画面等をUPする予定はありません。
コーエー系のサイトを持っている人の共通の悩みかもしれませんね……。
ま、実際かなり迷いました。というのも、

   「技術ナシで武田と戦えるのか?」

という疑念が閲覧して下さった方々の一部にあったようでして、
メール等による問い合わせがありました。
結論として、わたしのゲームの腕はそれほどでもありません、むしろヘタレです。
そんなわたしでも技術ナシでのプレイは可能でした。としか、言いようがありません(汗

   滅亡する時は滅亡したと素直に書きますので、
   そのあたりは、皆さんの判断にお任せします。
   また、似たようなプレイをすれば同じコトは出来ると思います。

掲示板にも書き込みましたが、
わたしが山名家リプレイで心掛けたコトを箇条書きで残しておきます。
これが証拠とはなりませんが、少しでも皆さんのお役に立てれば嬉しいです。
(これまでの内容と多少重複しますが、宜しければ見てください。)

 ○戦闘前準備
   
   兵力は多ければ多いほど良い。
   (拠点を落とすのに3〜5倍の兵力差で当たればまず大丈夫。)
   
   建造物に対して殴る部隊と、鼓舞専門部隊、計略専門部隊を分ける。
   (馬鎧で足軽戦法を軽減してくるので敵部隊に足軽戦法を使うのは勿体無い。
    城内にいる兵士には有効、敵部隊が残っていても城さえ落ちれば勝ち。)
   
   家宝等でドーピングする。
   (官位による統率UP、役職による最大兵士数のUP、
    家宝による統率や知略のUPは基本中の基本。
    おかげで統率100以上、知略90以上の武将は何名もいた。)
   
 ○接敵前
   
   闘志上昇スピードを少しでも上げる為に【激励】を多様する。
   (敵部隊には【流言】を流し動揺させる。【偽報】で敵の数を減らすのも手段の一つ。
    相手の闘志上昇スピードを少しでも抑えるのに有効。)
   
   敵は最前線の城に兵だけでなく騎馬も集める。
   最前線以外の城には騎馬が少ない。
   (騎馬が少ない城を攻めると信玄や謙信が【移動】でやってきても怖く無い。
    強い武将を引きつけて置き、本命の城を叩くのも有効。
    おそらく南部家が武田相手に粘っていたのは、これのおかげ。)
   
 ○戦闘中
   
   ゲーム進行は一番遅くしてプレイする。
   (戦法は間違えないように時間を止めてから発動するのが吉。)
   
   ダメージを受けた部隊はなるべく撤退。
   (これは相手に傷兵を吸収されない為に徹底するべき)
   
   相手をステータス異常にし続ける。
   (一発でも【混乱】が入ってくれれば、その間に闘志を貯めておける。
    あとは計略専門部隊が、相手の頭の悪い部隊に次々と【混乱】を掛けていく。
    こうすれば敵部隊は闘志を貯めるコトが出来ない。)
   
   建造物への攻撃専用部隊は闘志を貯めておくべし
   (敵兵が10万いたとして、9万が外に出たとしよう。
    城に残ったのは1万になってしまう。
    この1万に【乱戦】【強襲】【組撃】等の強力な戦法をぶつければ落城する。
    落城すると外にいる敵部隊は他の城へと撤退する。
    追い討ちを掛ければ、大ダメージを与えられるし、
    敵が残してくれた櫓や鉄砲櫓はコチラのモノになっており追加ダメージも期待できる。)
   
   当然だが【火牛計】【同士討】は敵部隊が多いほど有効。
   (狭いエリアに誘い込む(例:橋、山に挟まれた街道等)
    一部隊に1000づつダメージを与えるとする。
    相手が10部隊いれば1万のダメージ。)
   
 ○戦闘後
   
   賢い武将は斬る。微妙な武将は解放する。
   (武田軍に微妙武将率が高くなっていく、
    つまりコチラの戦法(特に計略系)に掛かりやすくなる。)
   
 ○結論
   
   相手に闘志を貯めさせない努力をする。
   通常の殴り合いなら兵力で圧倒できるハズ。
   一度の戦闘で負けて壊滅しても諦めなければ大丈夫。
   (※ 必ずと言って良い程、毎回綱渡り的戦闘になります。)

さて、最後ちょっと暗いお話になっちゃいましたが、
気を取り直して、元気に行きましょう!

次回のリプレイですが、
今回の縛りがあまりに厳しかったので、縛りナシの通常プレイをしてみます。
でも、強い大名家でガンガン攻めていくのは面白くないでしょうから、
当サイトに遊びに来てくださっているキョンさんのリクエスト、
滅亡するスピードNo1「太田家」で行きたいと思います。
次回もお楽しみにっ!!