少数精鋭「今川義元 プレイリポート」(その5)




     陸奥の荒武者(1570年〜


今川包囲網は脆くも崩れ去り、箕輪城を攻略した今川勢はそのまま北上。
勢いをそのままに春日山城を攻略した。
前回、大量に送った輸送隊のためか春日山城には五千の守兵しかおらず、
義元、雪斎、忠勝らは労せず春日山城へと入城したのである。
これに連係して富山城を攻略した武田信虎、酒井忠次は能登半島を北上し七尾城を攻略。
もはや今川家に対抗しうる勢力は無くなっていた……。と思っていた。が、

輪島港に籠もる上杉勢は、南部晴政、大浦為信らを七尾城へと向かわせる。
遠く酒井港、土崎港、十三港からかき集めた兵力は、なんと七万にも及んだ。
武田信虎、酒井忠次はすぐさま四万の軍勢を率い迎撃に出たが、多勢に無勢、
しかも意気上がる上杉騎馬隊の猛攻に苦戦、
臆する味方の兵を鼓舞しながら戦う今川軍であったが、
大浦為信の謀略に今川勢は混乱しまともな戦いにはならない。

この報を聞いた義元らは大量の軍馬を保有していた春日山城から
忠勝は騎馬隊を編成し、義元と雪斎は騎馬弓隊を編成し出撃した。
まもなく援軍が来ると信じ押され押されても耐え続ける七尾城ではあったが、
上杉勢のあまりの勢いになんと包囲され兵糧攻めにされかけていた。
唯一残った城門をめぐり武田信虎と酒井忠次が再度出陣する。
南部馬の激しい突進を耐えに耐え戦い続けるも力及ばず、
七尾城は傷病者を含め四万の兵が閉じ込められたのである。

 「……これまでか?」

兵糧攻めを受けはじめた数日後、士気も下がり覚悟を決めた信虎の目に、
遠くで上がる土煙が見えた。その上でゆれるは今川軍旗。

 「援軍じゃっ! 援軍がきたぞ!!」

軍勢の先陣を駆ける本多忠勝。
その狙う城門を包囲するは南部晴政。
その途端に南部晴政隊は整然とした軍列のまま忠勝隊に雪崩れ込む。

 「なんと猛々しい戦振り!」

猛将の名をほしいままにし、いまでは今川軍の中核を担う忠勝ではあったが、
晴政の凄まじい程の戦振りには感嘆の声をあげる。
今度はコチラの番だと崩れかけた騎馬隊をなんとかまとめ反撃のに移る忠勝。
その動きをまるで察知したかのように受け流される。

 「軍馬の扱いも知らぬ小童め!」

晴政率いる騎馬武者達がまたも雪崩れ込んでくる。
今度も何とか持ち直そうとする忠勝隊。
そこへ義元、雪斎の弓騎馬隊から一斉に矢が掛けられた。
不利を悟った晴政隊はすぐさま撤退に移った。
引き際もまた見事なり、七尾城包囲を解いた上杉軍は輪島港へと撤退を開始。
ここまで今川軍を苦しめた南部晴政隊ではあったが、
輪島港へ逃げ込んでからは遠い自勢力の拠点からの援軍も期待出来ず、
足軽を前面に出し後方から弓による援護射撃を繰り返す今川軍に追い詰められ、
最期まで守った輪島港で死を迎えることになった。


     石川数正と今川弓隊(1576年〜


武田家を滅亡に追い込み東北地方を北へ北へと攻め込んでいく今川家に、
数年前に大きな敗北を喫した上杉家は、それでも頑強に抵抗していた。
能登半島での戦いから既に六年という歳月が経っており、
その間は常に上杉騎馬との戦いが続いていたと言っても過言ではない。

上杉騎馬隊は「馬鎧」を開発しており足軽戦法からの被害を半減出来る。
逆に今川家は「当世具足」を開発し、騎馬戦法からの被害を半減出来る。
互いに決め手を欠いているのだが、それでも上杉騎馬隊の威力は凄まじく、
足軽隊だけで受け止めるのは非常に困難であった。
それを救うのが今川のお家芸となった弓の力である。

ゲームシステム的に弓は鉄砲に比べ、
いや正確には他の兵科に比べ、かなり見劣りする兵科である。
攻撃力もイマイチ、攻撃速度もイマイチ、戦法の威力もイマイチ、
戦法の連鎖率も対象となる技術がないためイマイチ……。
ただ、良いところもある。
足軽および騎馬隊には弓や鉄砲の戦法攻撃を軽減する技術が無い。
もちろん「弓や鉄砲」と言う以上は破壊力が段違いの鉄砲の方が強いのだが、
残念ながら今川家には鉄砲を得意とする武将があまりに少ない。
鉄砲技術を伸ばすのは難しいのである。
もともと弓が得意である今川家は早くから弓技術を伸ばしていた。
その関係上、騎馬隊には弓という作戦はしばしば採られていた。
足軽隊が前に出て敵の騎馬隊の勢いを削ぎ、
その間に今川弓隊が一斉に矢を掛けるのである。

上杉勢は長きにわたった今川家との戦いの雌雄を決するために、
岩出山城付近を決戦の地と判断し岩出山城および塩釜港に兵力を集中させた。
対する今川家は陸戦では騎馬隊の強い上杉有利と判断し、
弓を存分に使用できる海戦で塩釜港を攻撃する策に出るのであった。
また上杉軍の南下を牽制すべく磐城小高城にも兵力を集中させた。

 「雪斎、この戦、どう見る?」

塩釜港を目指す船の上、
主の問いに雪斎はこう答えた。

 「水軍の強さではお互い同じようなものでしょう。」

里見水軍が残した関船を幾重にも並べ塩釜を目指す船団。
対抗する上杉軍は恐らく安東水軍が残した関船で対抗してくるであろう。
しかし、と、雪斎は続けた。我らにはこの弓がございます。
事実、塩釜から出撃してきた上杉勢の艦船は次々と今川弓隊の前に壊滅していった。
弓隊の威力の違いがそのまま戦に影響しているのであろう。
こうして徐々に塩釜港へと接近する今川勢の関船ではあったが、
上杉方、最上義光の偽報で何隻かの関船が撤退を開始してしまうアクシデントもあり、
押してはいるものの塩釜港攻略に手間取っていた。

上杉軍はこの隙に乗じ岩出山城の騎馬隊三万を南下させる。
陸戦では上杉有利、しかし、ここは防がねばならない。
磐城小高城を出た足軽隊を率いる本多忠勝は上杉謙信本隊と正面から激突した。
当世具足で防備は固めているとは言え、度重なる上杉騎馬隊の突進を受け苦戦。
そこへ後方から石川数正率いる弓隊が一斉に矢を放つ。
バタバタと倒れていく騎馬武者達ではあったが上杉軍はそれでも足を止めない。
しかし今川軍も簡単に退くわけにはいかない。塩釜港が陥落するまで耐えたい。
耐えたいのだが本多忠勝隊は消耗しきっていた。
一度城に戻り兵の補充を行えばまだ戦える。
まだ城に兵士はいるが、それを率いる将が足りないのだ。
今川勢は苦渋の選択ではあったが一時撤退を開始。
ところが、ここで今川軍に隙が生じた。上杉騎馬隊が生じた隙に無理矢理入っていく。
騎馬隊の攻撃には無防備な弓隊を目掛けて、まさに疾風の如く、

 「怯むな、敵を射よっ!!」
 「勝手に射ても敵は倒せぬぞ。一斉に放てっ!」

弓隊の彼方此方から訓練され尽くしたハズの兵達怒号が響き渡る。
しかし勢いに乗る上杉軍は完全に今川弓隊の陣形を崩しきっていた。
もはや一斉に矢を放つ事など出来はしない。
連携の崩れた弓隊は浮き足立ち手にした脇差で敵に切りかかる者、
我先にと逃げ惑う者、恐怖のあまり念仏を唱える者が戦場を混乱へと導いた。
それでも敗走せず弓を構え敵を射殺していく者達があった。
石川数正と、その近衛の者達である。
すぐ目の前にまで迫る騎馬武者に対し臆することなく弓を構え矢を一斉に放つ。
どうと倒れる騎馬武者、また一騎、また一騎と射殺していく。

 「名のある武将とお見受けした!」

遠くで上杉方の騎馬武者が名乗りを上げる。そんな事はどうでも良い。
自らが手がけた弓を手に、次々と刀で切られ、槍で突かれる仲間達の仇に向けて放つ。
また一騎、また一騎と……百発百中の腕前で次々と射る。

 「おのれ! 正々堂々と勝負せよっ!」

数正にとって弓で射る事が正々堂々とした勝負であった。
迫る騎馬武者、その槍が届くか否かの寸前でひゅぅと音が鳴り武者が落馬する。

 「御首、頂戴致す。」

また別の武者が迫ってくる。
が、背にした矢筒にも腰にした矢筒にも矢は無かった。
周囲を見渡せば補充の矢を渡してくれる者はおらず、
最期まで付き合ってくれた部下達も全て討死していた。

 「義元様から弓術書を戴いたあの日から……」

越前朝倉家を滅ぼした後、義元は数正にその宝物庫にあった弓術書を授与した。
ともに弓の研究開発をし今後の今川家を支える技術をもたらす為に、
あの日以来、義元と雪道と数正は幾つもの技術を開発していった。
そしてその新たなる力は、精強と名高い上杉軍に対して確かに打撃を与えていた。

 「刀を抜く事は無いと思っておったが……」

数正は太刀を抜き鞘を捨てた。
もう自分は生きて帰ることは無いと覚悟したのだ。
刀を抜いた数正を見て上杉兵は数正を取り囲んだ。
数正の抜いた刀は飛び道具が尽きたことを意味していたのだから……。

この戦いにおいて石川数正は最期まで奮戦し壮絶な討死を遂げた、
そのすぐ後に塩釜港はその数正が開発に携わった弓技術によって攻略された。
小高城に攻撃を仕掛けていた上杉軍は、
塩釜港から出陣した今川軍に挟撃される形となって敗走し、
度重なる敗戦に大きな打撃を受けていた。岩出山城に籠もる四万の兵も、
塩釜港、小高城をはじめ北関東の各拠点から集結した今川十五万には抵抗空しく敗れ、
上杉軍の中核は壊滅し数ヵ月後は蝦夷に追い込まれ滅亡したのであった。

さて、この「革新」というゲームの中で、
最も多くのプレイヤーが恐れるのは上杉(場合によっては武田)の急成長。
そして彼らの最大まで成長した騎馬技術での凄まじい攻撃力なのだが、
前述どおり上杉も武田も滅亡し大きな障害もほとんどない、
ここから順調に天下統一へと進みそうなのだが、
次回もまた波乱万丈なドラマが繰り広げられます。

それにしても数正を失ったのは痛い。
弓適性は最高。統率も知力も高いし政治もかなり高い、
武勇は低いが誰か副将をつければ十二分に戦場に出れる。
そう考えると本当に頼りになる智将でした。
智将が少ない我が軍ではかなり痛い。うん、計略を防げる武将が減った。
ロードしたくなったよ、ホント……。